畠山警部補との電話の後、岩田はなんばから地下鉄・御堂筋線で本町へ向かった。
今日も、木下藤吉郎の講演が、なにわ産業文化ホールで開催される。
受け付けには、昨日と同様、片山社長、植芝会長。
辺りを見渡すと、Qnewニュースの山口圭子記者もいた。
「御隠居樣、いらっしゃいませ」
近付くと、山口圭子が苦笑しながら、そう応じた。
受け付けを済ませたあと、会場の中へ入った。
席は数百程度。
壇上には、スライドとホワイトボードが置かれていた。
予定通り、午後7時に開演した。
司会者が、木下藤吉郎の紹介をしているときには満席となり、熱気に溢れていた。
(一番前は、まずかった)
山口圭子に背中を押されて、仕方なく着席したが、辺りを見渡すことが出来ない。
司会者が下がると、木下藤吉郎が壇上に現れた。
木下藤吉郎は中肉中背というより、痩せ型に近い体型である。
しかし、俗にいうオーラがあり、大きく見えた。
「今、ご紹介にあずかりました木下藤吉郎です」
お約束のフレーズのあと、大阪経済の活性化について、語り始めた。
「ここからが、木下藤吉郎の真骨頂ですよ」
隣に座っている、Qnewニュースの記者がささやいた。
「大阪を活性化するには、経済圏を拡大する。これが一番です」
木下藤吉郎の大きな声が、ホールに響いた。
「具体的にどうするのか?」
「名古屋を取り込む」
自分で答えを言ったあと、木下藤吉郎が後ろをチラッと見た。
これが合図であった。係員がスライドのスイッチを入れた。
スクリーンに、日本地図が写し出された。
地図には、大阪を中心に2つの円があった。
「小さな円は、大阪から半径50キロを示しています。現在の大阪経済圏になります」
「大きな円は、大阪から半径150キロ」
木下藤吉郎が、地図にある二つの円の説明を行なった。
「大阪経済圏を拡大するというのは、経済圏を半径150キロまで広げるということです」
指し棒で、半径150キロの円をなぞった。
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大阪市中央公会堂(中之島) |
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大阪市中央公会堂(中之島) |
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大阪府立中之島図書館(中之島) |
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