(偶然にしては出き過ぎている)
殺害された田々和の捜査のため、2時間前まで刑事2人がここに居た。今度は田々和が所持していた絵の捜索のため、画商が来ている。
「おはずかしい話なのですが…。絵を買い取ることが決ったあと、私どもは販売先を探しまして、ある会社の会長と契約しました。そのため、早急に捜し出す必要が」
「失礼ですが、探偵事務所のことは誰からお聞きになられましたか?」
「知人に政治家や官僚をなさったいる方が多数います。こういうことで、非常に困っているという話を申し上げたところ」
「大阪府警の幹部の方から、岩田という元刑事が探偵事務所を開いている。辣腕刑事として有名だった人物だ。相談してみれば、と」
よどみなく答えた。
「幹部の方のお名前を教えていただけませんか?」
「それはちょっと。私どもと知り合いであることがわかると、ご迷惑が掛かります」
言葉使いは穏やかだが、はっきりと断わった。
(誰だろう)
画商の言い方を考えれば、かなり階級が上の人物になる。
「手付金です」
カバンから百万円の札束を2つ取り出し、机の上に置いた。
「絵が入りましたら、成功報酬として3百万円。もちろん、必要経費も支払います。いかがでしょう?」
申し分はない。依頼を引き受けた。
誰かに仕組まれているのかもしれない。それはそれでいい。6年前の事件は、取り調べに当たったのが岩田でなければ、田々和が犯人で事件は終わっていた。その田々和が殺害された。そして、岩田のもとにこの話がきた。
(宿命だ!)
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