北新地は大阪駅から南に500m、大阪を代表する繁華街である。
阿倍野から御堂筋線で梅田駅に。梅田駅から走り、北新地に入った。ブルーパピヨンの前に到着したのが午後7時半。
「いらっしゃいませ」
年配の黒服が静かに応対した。室内はシックで落ち着いた雰囲気。壁に掛かっている絵や、さりげなく置かれた陶器がこの店の格を表していた。
ホステス二人に挟まれる形で席に着いた。1人は柿元順子。36歳であるが20半ばに見えた。もう1人は20歳前に見えた。彼女も相当な美人であった。そして、飲物が運ばれてきた。
「ご無沙汰ですね。刑事さん」
柿元順子がそう切り出した。
「刑事は卒業したよ。今は探偵をしている」
「天下りして、会社の顧問にでもなられたのかと」
嫌味は無く、サラリと言った。
(たしかに。そうでないと、この店には入れない)
「ここではエリカという名前ですの。彼女はカレン」
隣の女性を紹介した。軽く挨拶をかわしたあと、すぐ本題に入った。長居すると、いくら料金を取られるか、わからない。もっとも依頼者に必要経費として請求するだけであるが、貧乏性が取れない。
「今日、ここに来たのは田々和かつ也のことです」
「でしょうね。何度も刑事さんに尋ねられて、迷惑しているのですよ」
微笑をたたえながら、そう応じた。
「殺人事件ですから」
場が静まりかえった。
|
|
|
|