有馬温泉は六甲山北側に位置し、山の中腹に張り付いた街である。古来からの温泉地で、日本書紀にも記載されている程。ゆえに中心街は道も狭いし、階段も多い。住所は神戸市北区有馬町。
ホテル到着後、部下の刑事2人が部屋の捜索に入った。
伊吹警部はホテルの会議室で、関係者から聞き取りを始めた。
会議室は6畳程の洋間で、警部の対面にホテルのフロント係・渡辺宏とツアー添乗員の小林優香が座った。ドアの近くには部下の刑事が立っていた。
「加藤和馬、36才、フリーカメラマン。住所は大阪市浪速区、電話番号は…」
警部がツアー名簿を読み上げた。
「確認してきます」
部下の刑事が手帳に書き写したあと、会議室を飛び出した。
「外出したのは何時か、わかりますか?」
「昨日の午後5時25分です。私が部屋の鍵を預りました」
フロント係がそう応えた後、広げたノートを差し出した。客の出入り記録が書き込まれていた。
太閤街道ツアーは昨日の午後4時50分、ホテルに到着。フリーカメラマンの加藤和馬はその35分後、フロントにやってきた。そして、部屋の鍵を預け外出した。
「変わった様子は?」
「慌てていました。ホテルを飛び出して、気にはなったのですが…」
「そのとき、何か持っていましたか?」
「いいえ、何も持っていなかったと思います。防犯カメラを確認していただければ」
そのとき、ドアがカチッと開いた。5分前、会議室を飛び出した刑事が戻った。
「県警本部で身元確認をしています。少し時間が掛かるかもしれません」
部下の刑事がそう告げた。
「太閤街道ツアーとは、どういう?」
添乗員に尋ねた。ホテルに戻り、少し落ち着いたようであった。
「豊臣秀吉のゆかりの地を辿る、3泊4日のバスツアーです。主催は中京総合ツーリスト。名古屋駅前にあります」
応えたあと、カバンからパンフレットを取り出し、伊吹警部に渡した。
「あなたも?」
旅行会社の社員かどうか尋ねた。
「いいえ。派遣会社に所属しています」
添乗員はほぼ派遣である。
「旅行会社には?」
「はい。警察からの電話のあと、連絡しました」
「このツアー名簿ですが、加藤和馬の名前が付け足されていますね?」
添乗員が所持していた名簿は「コピー」である。しかし、加藤和馬だけは23名のツアー客に付け足す形で、ペンで書き込まれていた。
「はい。加藤様は2日目からの参加者です」
「2日目からの?」
「はい。長良川温泉に到着したあと、旅行会社から電話がありました。明日から1名追加されると」
長良川温泉は初日の宿泊地である。
「よくあることですか?」
「何度かありました。初日のツアーは愛知と岐阜です。地元の人間からすれば、今さらということになります。そういうお客様は2日目から参加します」
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有馬温泉:©神戸観光局 |
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有馬温泉の街角:©神戸観光局 |
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有馬温泉・金の湯:©神戸観光局 |
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有馬温泉・金の湯:©神戸観光局 |
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有馬温泉・銀の湯:©神戸観光局 |
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有馬温泉の街角 |
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有馬温泉・金の湯 |
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有馬温泉・御所泉源 |
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