太閤街道殺人事件
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「失礼します」
 
白い手袋を付けた部下の刑事2人が入ってきた。部屋を捜索していた刑事である。
       
「カメラバッグだけが残されていました」
   
アルミ製のバッグを机の上に置いた。

「持ち物はこれだけでしたか?」
    
添乗員が肯いた。国内ツアーでは何も持たずに参加する男性もいる。
   
洗面用具など持参しなくても、ホテルに備わっている。そのうえ、24時間営業のコンビニが全国至る所にある。必要な物はいつでもコンビニで購入できる。ここ有馬温泉でも、一番便利な場所にコンビニが存在する。
  
「バッグの中にデジタルカメラがありました。しかし、一枚も撮られていません。それから、メモがありました」
  
説明した後、紙切れが入ったビニール袋を机の上に置いた。
      
紙切れは10×15センチ程度の白い紙。『710ー3=1兆』という計算式がペンで書かれていた。

「何か、わかりますか?」
  
「いいえ」
   
旅行中の状況などを質問し、聞き取りを終えた。
     
その直後、旅行会社の人間が有馬温泉のホテルに到着した。

1人はツアーの担当者、事業部の鈴木市郎。30代のヒラ社員で、アニメに出てくる「森のクマさん」といった容姿である。もう1人は総務部係長の山中進。40代、細身で銀ぶちメガネを掛けていた。

(何かある)
  
受け答えは丁寧だが、肝心なことについて、うまくかわされた。添乗員から聞いた以上のことは、何も得ることが無かった。
       
その後、ツアーバスの運転手からも聞き取りを行なった。彼は本当に何も知らないようであった。

聞き取りを終えたとき、県警本部から連絡が入った。被害者の住所や電話番号はデタラメ。加藤和馬という名前に該当する人物もいない。つまり、偽名であった。

しかし翌日、大阪府警の協力により身元が割れた。紅葉谷公園で殺害されていたのは、大阪市東淀川区在住の田々和(ただわ)かつ也、36歳。元暴力団であった。

 
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風景
有馬温泉・太閤秀吉の銅像
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有馬温泉・太閤橋
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有馬温泉・ねねの銅像
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有馬温泉・ねね橋
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有馬温泉
    Qnewニュースプレゼンツ