「あ、岩田さん。畠山です。ご無沙汰しています」
「これから、お伺いしてよろしいでしょうか?」
「はい。少しお聞きしたいことが。では30分後に」
大阪府警・畠山警部補の電話が終わった。
電話の相手は岩田辰郎(たつお)、58歳。
2年前まで、大阪府警の刑事をしていた人物である。
「阿倍野の事務所にいました。ではこれから」
大阪府警の畠山警部補がそう告げると、兵庫県警の伊吹警部が深くうなずいた。
2人の刑事は大阪府警本部を出た。
府警本部は、大阪城の西隣にある立派な建物である。
そして、畠山警部補が運転する車で、阿倍野へ向かった。
「伝説の刑事ですね?」
助手席の伊吹警部が確認した。
「兵庫県警でも有名ですか…」
苦笑しながら、畠山警部補が応じた。
「一度、お会いしたいと思っていました。しかし、定年退職されていたとは」
伊吹警部がそう応じた。
「定年までは、あと少しあったのですが、いろいろとありまして」
「上には煙たがれていた人ですから、現場から外そうと」
言いにくそうに、畠山警部補が説明した。
「それより奥様を亡くされたことが。何ひとつ家内孝行できなかった、そう嘆いていました」
「娘さん2人は嫁いでいますので、今は気楽な独り身です」
「雑居ビルの一室を借りて、探偵事務所を開いています。自宅からは徒歩5分の場所です」
「もっとも探偵というより、街の防犯係と言った方が適切かもしれません」
畠山警部補の説明が終わった。
天王寺駅は大阪を代表するターミナルである。
和歌山、奈良への玄関口となっている。
この駅名を使っているのは、JRと地下鉄。
隣接する近鉄の方は、大阪阿部野橋駅を名乗っている。
古来からある「阿部野橋」に因み、大正時代に付けられた駅名。
今さら、近鉄天王寺駅とは出来ないようである。
その天王寺駅から南に約1キロ、マンションやオフィスビル、一戸建てが混在する地域である。
住所は阿倍野区阪南町。
街角に古い四階建ての雑居ビルがあった。
その2階に、阿倍野岩田探偵事務所が入居している。
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大阪府警本部 |
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大阪阿部野橋駅 |
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阿部野橋駅の駅ビル・あべのハルカス |
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